らくらくラテン語入門
第12回 動詞の活用―現在時制(まとめ)
SALVETE! UT VALETIS? Justusです。
最近ずっと名詞と形容詞の格変化をやってきましたが、ラテン語動詞のメルマガを出した関係もありますので、今日は、動詞の活用について少し学びましょう。
ちなみに、ラテン語の語尾変化のことを、全部ひっくるめて、イーンフレクティオー(inflectio)といいます。そして、イーンフレクティオーは、似ているもの同士まとめると、二つのグループに分けられます。
一つは、デークリーナーティオー(declinatio)といって、名詞・形容詞・代名詞に適用されるものです。これを、日本語では、格変化とか、格変とか訳していますが、イタリア語だとデクリナツィオーネ(declinazione)、ドイツ語だとデクリナツィオーン(Deklination)、英語だとデクレンジョン(declension)など、ヨーロッパ語では軒並みラテン語のタームをそのまま使っています。特に、ドイツ語では、現在でも名詞・形容詞・代名詞に格変化がありますから、ドイツ語をやったことがある方は、耳にしたことがあるでしょう。
もう一つのグループは、コニュガーティオー(coniugatio)と呼ばれるものです。これは、動詞に適用されるものです。今日見ていくものは、こちらになります。
この動詞メルマガをとっておられる方の中には、
「毎日いろいろな活用形があって、覚えるのが大変だなあ…。」
と思っておられる方もいらっしゃるかもしれません。
実は、動詞の活用というのは、パターンがあります。パターンを学ぶと、とても楽に習得できると思います。
パターンには、大きく分けて5種類あります。
- E型
- I(長音)型
- I(短音)型
- A型
- 子音型
いつも冒頭に、「四基本形」と呼ばれるものが並んでいます。例えば、昨日出てきた
bibo, bibi, potum, bibere
「飲む」
でしたら、bibo, bibi, potum, bibereというのがそうです。
で、その一番目が現在時制の一人称単数形(私は~する)です。ここがもし
- -eoとなっていたら、E型
- -ioとなっていたら、I型
です。I型はこのIが長いか短いかによって二つに分かれますが、それを区別するのは不定形、つまり、四つ目の形です。英語・ドイツ語その他のヨーロッパ言語にも動詞の不定形(不定詞とも言う)というのはありますので、特に込み入った説明しなくてもわかっていただけると思います。要するに、「誰がその行為をするのか」ということを決めないで動詞を話題に出したい場合に使う形です。例えば、
To see is to believe.
(見ることは信ずること)
とか、
Vouloir, c’est pouvoir.
(やりたいことはできること)
とかです。誰がその主体(主語、Subjekt)になってもいいわけです。皆さんが主体になってもいいし、私が主体になってもいい。
この不定詞が、通常、四基本形の4番目に配置されているわけですが、これを見ると、I型のIが長音か短音かが分かります。もし不定形が
- -ireだったら、I(長音)型
- -ereだったら、I(短音)型
になります。簡単ですね。
現在時制の一人称単数形(私は~する、四基本形の一番目)に話を戻しますと、それが-eo、-io以外の形をしている場合も、不定形で区別ができます。
- -areだったらA型
- -ereだったら子音型
- facio, feci, factum, facere(する)
- edo, edi, esum, edere(食べる)
- bibo, bibi, potum, bibere(飲む)
- dormio, dormivi, dormitum, dormire(眠る)
ところで、実は、このパターンに当てはまらないものがいくつかあります。いわゆる「不規則動詞」というものです。今まで動詞メルマガで出てきた中では、次のものがそうです:
- sum, fui, -, esse(ある)
- eo, ii, itum, ire(行く)
- fio, factus sum, -, fieri(なる)
不規則動詞は、他にも、よく使う基本的な動詞にいくつかありますが、数は多くありません。フランス語より断然楽です。
それ以外の動詞は、すべてパターン化されていますので、慣れてくれば簡単にできるようになります。それでは、それはどういうパターンか? それは、自分で発見してみましょう! 自分で発見したほうが、楽しいですし、記憶も確かになります。動詞メルマガをとっている方は、毎日、「これはどのパターンかなあ?」と考えてみると、記憶の定着もよくなると思います。
もしかしたら、「だったら、パターンだけ覚えればいいのでは?」と思うかもしれません。でも、語学でこれはタブーです。例えば、ドイツ語で例を出すと、
Ich hätte gerne ein Stück Kuchen, bitte.
(一切れケーキをいただけますか)
というところを、活用や格変化を考えながらしゃべるとこうなります(昔、私もそうだったことがあるので、よくわかります)
Ich .... eh .... hattest ... eh ..... nein ..... hättest ..... eh .... nein, nein ..... hätte ..... gerne eine .... Quatsch ..... einen .... nein, wieder ein Quatsch ...... ein Stuck .... nee Quatsch .... Stück ..... Kuchen, bitte.
(びと・・・じゃなかった・・・えーと・・・ぴと・・・でもなかった・・・えーと・・・ひとぎれ・・・じゃなかった・・・きれ・・・・ケーキを・・・いただき・・・あ、ちがうちがう、まちがえました・・・いただか・・・・あっ、これもちがった・・・いただけますか?)
ちょっと大袈裟すぎたかな(笑)。まあ、でも、まどろっこしい感じはよく伝わったと思います。これじゃあ、会話どころじゃないですね。
こういう事態を避けるために、直接使う形のほうをメインに覚えて、パターンは記憶の補助手段くらいに考えたほうがよいと思います。言語というのは、聞く・話す・読む・書く、どれをとっても、ある程度の速さが要求されるからです。
そういうわけですので、しばらくは、パターンの中身は伏せておきます。いずれ、しばらくしたらこのメルマガでも書こうと思います。
それまで待ちきれない方は、こちらへどうぞ。
第12回 まとめ
- パターン通りの活用をする動詞(規則動詞)
- 現在時制一人称単数が
- -eo:E型
- -io:I型
- 不定形が-ire:I(長音)型
- 不定形が-ere:I(短音)型
- それ以外
- 不定形が-are:A型
- 不定形が-ere:子音型
- パターン通りの活用をしない動詞(不規則動詞)
- sum, fui, -, esse
- eo, ii, itum, ire
- fio, factus sum, -, fieri
それではまた次回。 VALETE!