らくらくラテン語入門
第16回 名詞のO型格変化の変種
SALVETE! UT VALETIS? Justusです。
前々回から、挨拶の文法的な分析をしているのでしたね。
- bonum diem
- bonum vesperum
- bonam noctem
このうち、bonam noctemとbonum diemについてはやりました。noxはI型、diesはE型の格変化なのでしたね。
今回は、bonum vesperumを片付けて、挨拶を終わりにしましょう。
でも、これは、とても簡単です。なぜなら、これは既に勉強したO型の変種に過ぎないからです。
I型や子音型では、主格が特殊な形をするのでしたが、このO型変種も、主格で特殊な形をするのです。違いはこれだけです。
まずは、O型の復習のために、主格は空欄にして、他の格を埋めてみましょう。
( ) - ( ) - ( ) - vesperum - ( )
・・・
いかがでしたか?
そうです。
( ) - vesperi - vespero - vesperum - vespero
となりますね。それでは主格はどうなるでしょうか?
この名詞は男性名詞なので、通常のO型ならば、「vesperus」というのが来そうです。しかし、そうは問屋が卸しません。何と、主格には、変化語尾なしの
vesper
という形がきます。つまり、全体像としては、
vesper - vesperi - vespero - vesperum - vespero
となるわけですね。一般化すると:
- / -i / -o / -um / -o
となります。「vir(男)」などもこの部類で:
vir - viri - viro - virum - viro
となります。
しかし、これなどは、やや面倒ですが、それほどけしからん部類には入りません。実はもっといやらしい語尾があり、これは、語幹の中に不純物を混ぜ込んで、自分は消えてしまう語尾もあります。
例えば、「私は本を読んでいる」なら、
librum lego.
ですが、このlibrum(本を)もO型の変種の格変化をします。librumという対格をヒントにして、試しに、主格以外の格変化をさせてみてください。
( ) - ( ) - ( ) - librum - ( )
・・・
いかがですか?
( ) - libri - libro - librum - libro
そして、変種で語尾はなしですから、主格にはてっきり「libr」が来るのかとおもいきや、
liber
という形がきます。つまり、librの間にeを混ぜ込んで、語尾が消えるのです。まあ、確かに、「libr」だとちょっと発音しにくい(というより、聴き取りにくい)ですよね。
もう一つ、今度は主格のほうからやってみましょう。faber(職人)という語も同様の格変化のパターンですが、格変化の全貌はどうなるでしょうか?
・・・
そうですね。
faber - fabri- fabro - fabrum - fabro
となります。
余談ですが、これらの語を見て、英語のlibrary(図書館)とか、ドイツ語のFabrik(工場)とかが思い浮かんだ方も多いのではないでしょうか。もちろん、語源的には、liber・faberから来ているわけですが、いずれも、libr・fabrという風になっていることに気づかれると思います。
ラテン語の単語を書くときは、習慣として主格と属格を並べて書くのですが、そのことが子音型で大いに役立つことは、以前申し上げましたね。この、主格と属格を並べて書く書き方は、ここでも威力を発揮します。liberとか、faberとかだけだと、他の変化形が分かりませんが、liber, libriとか、faber, fabriとか書いてあれば、格変化の全貌が分かりますよね。これに対して、vesper, vesperiだったら、属格その他の格でもeが語幹に入っているな、と分かります。
さて、今日はいろいろとイヤラシイものを勉強しましたが、実は、子音型には、もっとイヤラシイものがあります。語幹の一部を取り替えて、自分は消えてしまう語尾とか、あるいは、語幹の一部を抉り取って消えてしまう語尾とか。それに較べれば、O型の変種は簡単です。
第16回 まとめ
- O型の変種:- / -i / -o / -um / -o
- vesper - vesperi - vespero - vesperum - vespero
- vir - viri - viro - virum - viro
- liber - libri - libro - librum - libro
- faber - fabri - fabro - fabrum - fabro
それではまた次回。VALETE!