らくらくラテン語入門
第15回 名詞のE型格変化
SALVETE! UT VALETIS? Justusです。
前回から、
- bonum diem(おはようございます、こんにちは)
- bonum vesperum(こんばんは)
- bonam noctem(おやすみなさい)
の三つの挨拶の文法的な分析を行っています。
前回は、bonam noctemの分析をやりましたので、今回はbonum diemを分析しましょう。
このdiemは、対格ですが、E型という格変化の種類です。主格と属格は、dies, dieiとなります。
このE型は、数は少ないのですが、重要な語が多いので、ぜひマスターする必要があります。このdies, dieiも「日」という意味ですから、頻出する重要語の一つです。他にも「もの、こと」を意味するres, reiという超重要語があります。「第五格変化(fünfte Deklination)」とされて、後回しにされることの多いこの格変化ですが、重要度からすればまっさきに片付けるべき格変化です。
E型の格変化の全貌ですが:
- dies - diei - diei - diem - die
- res - rei - rei - rem - re
となっています(diemという形から対格だと特定できることが分かりますね)。つまり、
es - ei - ei - em - e
というのが、E型の語尾変化のパターンです。
以前、コラムでres publica(公共体)のお話をしたことを覚えていますか? このres publicaは:
res publica - rei publicae - rei publicae - rem publicam - re publica
と変化することになりますね。Ciceroの著作に『De re publica』(公共体について)というのがありますが、これは、前置詞deの補語になっているので、奪格をとっているわけですね。
それでは、練習のために、fides(信義誠実)という語を変化させてみましょう。
どうぞ!
・・・
・・・
・・・
いかがでしたか?
fides - fidei - fidei - fidem - fide
となりますね。
医者や生物学者と同様、法律家もラテン語をよく使うのですが、bona fideというはよく出てくるものの一つです。bonaからは主格か奪格かを判断できませんが、fideから、これは奪格だと分かりますね。「善意で(in gutem Glauben)」ということです(もっとも、古代ローマではいろいろな用法があったようですが、それについては割愛)。
昔、ゲーテの法律ドイツ語コースに参加したときに、こういう事件がありました。イタリア人の法律家が何かを主張したかったのですが、彼女は「in gutem Glauben」という表現を知りませんでした。そこでどうしたか? 「bona fideによれば云々」という風に言ったのです。もちろん、みな彼女が何を言いたかったのか理解でき、議論が滞りなく進んでいきました。
そういえば、チェコ人の法律家も「仲良しのベルギー人とドイツ語で法律の話をするとき、ある法律用語が、ドイツ語では何というのか分からないことがよくあるの。でも、そんなときラテン語でいうと、必ず分かってもらえるのよね」と言っていました。
ことほどさように、ヨーロッパ大陸ではラテン語というのは便利なのです。ちょっと硬い文章を書くときにさりげなく使うと、カッコいいですしね。
最後にもう一つ例を挙げて、今日は終わりにしましょう。英語などで「prima facie」という表現を見たこともある方も多いのではないでしょうか。これは:
- primus, prima, primum 第一の、最初の
- facies, faciei (f.) 外見、顔
が奪格になったもので、「一見すると」ということです。facies, facieiの格変化は:
facies - faciei - faciei - faciem - facie
となりますね。
第15回 まとめ
- E型:-es / -ei / -ei / -em / -e
- dies - diei - diei - diem - die
- res publica - rei publicae - rei publicae - rem publicam - re publica
- bona fides - bonae fidei - bonae fidei - bonam fidem - bona fide
- prima facies - primae faciei - primae faciei - primam fariem - prima facie
それではまた次回。VALETE!